喜左衛門ブログ:President Blog

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2022年11月14日 (月)

我が家の二つの家訓

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・・・世間よしに励め・・・
これは、塚本喜左衛門家の家訓で、左から読んで、「積善の家に必ず余慶あり」です。
意訳すると、「よい行いを積む家(店)には、必ず、子孫に慶びごとがある」
つまり「世間よしを永く続けると商売は必ず繫栄するから社会貢献に励め」と言っています。

◆伊藤忠兵衛さん(伊藤忠商事、丸紅の祖先、1858年創業)は、近江の豊郷を出て成功しましたが、他の地域(他府県、外国)に出かけ、懸命に働き商売に勝ち抜く(地元の同業者に勝つ)と思わぬ恨みを買います。
そこで自分自身は質素倹約をして地元のために貢献して信頼を得ることに心を砕きました。

◆矢尾百貨店さんは近江の日野町から出て秩父(埼玉県、1749年創業)で商いを始めました。
矢尾さんは、近江から丁稚・番頭を雇い大繁盛し、正直な商売と地元貢献に勤めました。

明治初年、政情不安定なとき、秩父で百姓一揆が起こり、多くの質屋、酒屋、呉服屋など富裕な商人の店が軒並みに叩きつぶされました。
矢尾さんの店の前に来ると、一揆のリーダーが、「ここは我々の生活や村を支えてくれた店だ。」と叫び、矢尾さんの店だけは守られたそうです。
社会にとってなくてはならぬ店は継続し、自分の儲けだけに走る店は消滅していきます。
これは近江商人ならずとも、世界中でおなじことでしょうね。

 

・・・お客様のため、世のために懸命に励め・・・
この掛け軸は、「長者三代の鑑」(かがみ)という塚本喜左衛門家の絵の家訓です。
ツカキは世間では有名ではありませんが、この無名の掛け軸はNHK、日経新聞、雑誌などでたびたび登場し、実は有名な掛け軸なのです。

◆一番下が創業の図、真ん中の絵が2代目、上が3代目の有様です。
創業者は、朝から晩まで炭をノコギリで切り、炭俵(すみたわら、燃料)にしています。
伴侶は、炭の粉を集めてタドン(おにぎりのような固形燃料)を作っています。
夫婦は「お客様のため、世のため」と思い、うれしそうな顔をして懸命に励んでいます。

◆真ん中は、そんな親の姿を見て、真っ黒になって働く親父よりも自分は教養とたしなみ事を学び、自分はもっと社交にうまくなり出世しようとお茶の稽古に励んでいます。
しかし、朝から晩まで働くという習慣は失せ、お客様・世のためというより、自分の出世や楽しみごとに頭が一杯のように見えます。

◆上段は、そんな結果、商いは破綻し乞食となって怖げな野良犬(借金取り)に吠えられています。手には昔の手習いの謡曲と白扇をもって、調子(リズム)の乗って歩いています。
落語で、「唐様で売り家と書き」(オシャレな達筆と零落した若旦那を皮肉っている)に通じますね。

この掛け軸は、昔、先祖が戒めに書いてもらったものでしょうが、私の祖母のが針仕事をしていた後ろに掛けていました。
私が小学校から帰って「ただいま帰りました」と祖母に手をついて挨拶をすると、怖い顔して、「この掛け軸は、創業のじいさんが頑張って、次の代が遊びほうけると、その次はこうなるんじゃ!!今みたいに忙しい世の中になると、お前が乞食するぞ!!」と唸りました。

怖いですねぇ・・・

祖母は、「子供は一生懸命に勉強・家の手伝いをして、大きくなったら仕事に懸命に励むんじゃ」と言いました。
私の父もそのように育ち、私もかように育ちましたから、父も私も朝3時半から起きて代々、励んでいます。