喜左衛門ブログ:President Blog

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2015年12月21日 (月)

ブラジル訪問【2】世界最高のシルクを求めて

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南米最大の都市サンパウロから一路、ロンドリーナにGOL航空で飛びます。    
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ロンドリーナから車で3時間、バストスに向かって・・    
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見わたす限り、大豆の畑・・・地平線のむこうまで道が続く・・・ 平原ばかりで山が無いですね。

世界一のシルクの聖地・・BRATAC(ブラタク)のバストス工場に到着しました。 京都から乗り物だけで40時間もかかりました・・・    
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ブラタク社は、日本の国策組合の「ブラジル拓殖組合」(略称ブラタク、1920年創立)より発し、1940年に独立し第二次大戦を乗り越えた筋金入りの日系会社で、世界最高の生糸(6~14デニール)を生産しエルメスのシルクスカーフなどの糸を供給しています。 当社では、「西陣織美術工芸あさぎ」はブラタク社の糸を使っています。

茂原専務の直々の案内でバストス工場を見学 さっそく稚蚕(ちさん)飼育所の見学です。
1ミリくらいの稚蚕(カイコの幼虫)が沢山おり、桑の葉を与えました。    
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3分間くらいで桑の葉は消滅しました。 ブラタク社は100種のカイコの原種を生体保存し、4原種の交配で生産をしています。

ブラタク社は、社員1000人、傘下の養蚕農家2600軒、皆で1万人を抱える世界一、ダントツの品質の「養蚕、製糸メーカー」です。 カネボウは2005年にブラジル製糸を廃業し、唯一継承したフジクラもやめてしまいました。
ブラタク社の谷口社長です。(日系3世)    
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「おカイコさま」です。    
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蚕(カイコ)は、古代から人類が家畜化し、羽化しても羽が退化して飛べず、人間の手でしか生存できません。
(野生の蚕は存在しない世にも珍しい生き物です) 「一匹、2匹」ではなく「一頭、二頭」と数えます。

広々した桑畑です。この桑(クワ)の原種も100以上あり、栽培保存をしています。 クワはトラクターで収穫します。    s151221_009.jpg
向こうの林はユウカリでブラタク社の膨大な燃料用に使います。 カイコにとって大敵は、トウモロコシ畑の殺虫剤の空中散布による桑の葉の汚染です。 カイコは昆虫ですから、これはたまりません。

桑の葉と群がるカイコの幼虫です。    
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想像を絶する巨大な装置産業ですね。(ブラタクの直営養蚕施設)

カイコの幼虫が這い上がってさなぎ(まゆ)をつくる固紙製のワク    
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繭(まゆ)の出来具合を見る仲さんと当社の名越君(あさぎ事業部)    
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◆ 種繭(たねまゆ)用のさなぎ(まゆ)から、幼虫を取り出します。       
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オスとメスです。     
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幼虫が早くも羽化しました。

オスとメスが受精をしています。    
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オスは赤い色をスプレーで付けられています。
このカップルは2時間ほどで割愛(愛を割かれる)され、オスは2ラウンド目に臨みます。

メスが排卵しました。(一頭で500個くらいの卵)    
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この蚕紙(卵)から、稚蚕が生まれます。 養蚕農家は稚蚕から「まゆ」までを受け持ちます。 ブラジルは、年間7~8回、まゆを産します。(日本は寒くて3~4回です) カイコの生産の大敵は微粒子病です。 卵の時点で検査を厳重にして、もし発生するとその種は全量廃棄して防疫体制をとります。 欧州の養蚕業は、昔、この微粒子病で全滅しました。

◆ 養蚕農家より、収穫された繭がブラタク社に集まってきます。    
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これは政府が決める繭(まゆ)の最低買い入れ価格の表示で、ブラタク社はこの価格のプラスアルファで買付けをしています。ブラジルは労働党政権で社会主義みたいですね。 養蚕農家は専業で年間1トン位のまゆの収量があります。 この農家(2600軒)をブラタク社は50カ所の出張所で管理をしています。

繭(まゆ)が入荷され、巨大な乾燥機(10段階)に入ります。    
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左から、小生、ブラタク社の谷口社長、家内(弊社監査役)、弊社の名越君

繭が煮たてられ、製糸工程にむかいます。    
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厳重な糸質検査です。    
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生糸の品質はネップ(くず綿の付着)が厄介でこの除去が高品質の糸の命です。 ブラタク社の女工員は視力のいい10代から40歳位まで若い人たちが主力です。

撚糸工程です。    
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ブラタク社のラベル入りの生糸の製品です。    
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◆ バストスから車で3時間、再びロンドリーナに戻りました。 ブラタク本社で記念撮影です。    
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ブラタク糸を使った「西陣織美術工芸あさぎ」の作品を記念品に贈呈    
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会議室にブラタク社の幹部とディスカッションです。    
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左は、谷口社長と頭上の写真は祖父の2代目の谷口ブラタク社長
右は、レナータさんと写真は祖父の初代の天野ブラタク社長
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さすがによく似ていますね。 幹部の方と記念撮影です。    
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ISOや欧州の認証を沢山、取得されています。    
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本社工場には、カイゼン、8Sや、色々な品質向上の取り組みがあり、向上メンバーの責任、向上へのシステム化が進み、血の通った品質改善への懸命さが伝わってきます。 蚕の卵から幼虫、繭、製糸への流れのパネルです。    
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工場の空き地では、牛や羊、ヤギを飼っています。    
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ブラジル料理は肉が主役で色々な肉が登場します。    
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ブラタクのメンバーは、日系1、2,3世、ブラジル人など色々です。

雨の中、ロンドリーナ空港からサンパウロに向かい帰途につきました。    
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(後記)
読者の方には、ながながとシルクの話にお付き合い頂き有難うございました。
ブラタク社の谷口社長さんに終始お付き合い頂き、茂原専務さんにバストス工場を2日間もご説明頂き、薬師神本社工場長さんに大変お世話になり、素晴らしい勉強になりました。 ありがとうございます。
シルク万歳ヽ(^o^)丿