喜左衛門ブログ:President Blog

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2022年9月16日 (金)

陶芸のサンエモン

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佐賀県は有田焼、唐津焼など江戸時代から陶芸が盛んな地域で「人間国宝のサンエモン」が有名です。
有田焼にて、1800年代からヨーロッパでも有名人の酒井田柿右衛門さん、もう一人の有名人は今泉今右衛門さん、そして唐津焼の中里太郎右衛門さんです。
この3人のエモン(右衛門)で「サンエモン」というのが肥前の習わしです。
ともに江戸時代初期からの伝統の登り窯で、14~15代続いている名家です。

◆コロナ禍の半年前の2019年9月、九州へ行く用事があり家内と唐津を訪れました。
唐津は朝鮮、中国に面する海の要所ですから、徳川幕府は譜代大名を置き重要な拠点でした。
中里太郎右衛門の登り窯を見学に行きました。

12代(1895-1985)は伝統工芸の人間国宝、13代(1923-2009)は伝統に反逆しながら日本学術院会員として異彩は放ちました。
小生は12代の人間性に惚れながら、13代のアート性にほれ込み、作品を購入しました。

当代の14代はご不在で、ご夫人にとてもよくして頂きました。

2022年6月に14代が京都に来られたので会いに行きました。

意気投合して作品を一つ購入しました。
それが、やっと先日、小生の手元に届きました。

「ウサギの絵付けの掻き落とし」14代目・中里太郎右衛門

◆本場、有田焼で今泉今右衛門13代(1926-2001)は吹き墨の技法で人間国宝、その次男の14代(1962-)も見事に人間国宝になりました。

「色絵薄墨墨はじき四季花文、花瓶」14代・今泉今右衛門

お気に入りの逸品です。

◆有田焼の代表は、酒井田柿右衛門です。
14代目(1934―2013)は偉大な陶芸家で小生は大ファンでした。
「濁手・三方割・花文蓋物」14代・酒井田柿右衛門(人間国宝)


14代は祖父と父が完成させた濁手(にごして、白濁したミルキーな深みのある白磁)を会得し、さらに「色絵磁器」によって人間国宝になりました。
14代は誠実な人柄で、きれいな白磁とうつくしい白磁を比較して。「この私の作品はきれいですがうつくしいとは言えません」と謙虚に語られ、その率直さに感動しました。

「濁手・花文・香炉」14代・酒井田柿右衛門(人間国宝)

これは愛すべき柿右衛門さんの香炉ですが、私の失敗でふたが滑り落ちて割れてしまい錫で火屋(ほや、金属のフタ)を別注で作りました。

柿右衛門工房の濁手の担当だった井上萬二さん(1995-)は、独立してアメリカに渡り白磁の独自の境地をひらき、1995年に人間国宝になりました。
「白磁緑・夕顔彫文・面取」井上萬二作(人間国宝)

後記
焼き物の世界は伝統工芸の面白みのある世界です。
一子相伝で技法を伝え、息子は親にはない技法を編み出し、自分のデザインの特徴を作っていきます。
親の模倣から抜け出し、自分のあたらしい境地が開くことが大事ですね。
大いに伝統工芸の未来を期待したところです。