喜左衛門ブログ:President Blog

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2025年8月18日 (月)

畑正高さん(松栄堂の社長)を偲ぶ

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京都の代表的な文化人であり経済人であった畑正高さんが8月9日に71歳で突然に逝去されました。(8月18日通夜式の遺影)

小生は同じ京都の伝統産業の仲間として痛恨の極みです。
京都のお香の老舗である松栄堂さんは320年前に創業され、京都、銀座、横浜、大阪、アメリカなどへ進出されています。
京都の誇るべき伝統文化、さらに逞しく革新を繰り返し現代を生き抜く「お香の企業」として発展されました。

◆弊社とのつながりは、60年前、松栄堂さんが東京・日本橋浜町にある「浜町京都ビル」(創業は小生の父・5代目喜左衛門、現社長は小生)に入居されて以来の長いおつきあいです。(その後、松栄堂さんは日本橋人形町店、銀座店へと移転されました)

1964年は小生は高校生、畑正高さんは小学生の頃の話です。

◆2021年6月に西陣織あさぎ美術館の講演会で畑正高さんに講師を依頼しました。
講演会は「香を商う~温故~」というタイトルでした。
講師の畑正高さんは創業320年の松栄堂の12代目の当主です。

香木についての話です。

お香とお茶会について

伝統産業に革新をもたらし、お香の手作りのよさを改良して生産性を向上されました。


西陣織あさぎ美術館では源氏物語の絵巻物を丸帯に織り上げ、源氏香の組香のデザインが帯の模様になっています。
畑さんは組香の仕組みをわかりやすく教えて頂きました。

西陣織あさぎ美術館の館長である小生は質問をしました。

「信長と正親天皇の確執を生んだ正倉院の蘭奢待(らんじゃたい)」について尋ねました。(当時の大河ドラマ「麒麟が行く」(明智光秀のドラマ)でこれは重要なシーンでした)

畑さん「塚本はん、地雷を踏みましたなぁ…これを話すと半時間はかかりますなぁ」と笑い飛ばして親切に話を頂戴しました。
なんとも楽しいひとときでした。
会場から拍手が鳴りやまず、講演後も名刺交換と質問の長蛇の列となりました。
畑さん、ありがとうございました。

◆2025年6月に「登録文化財所有者の会」の全国大会を京都で開催しました。
文化庁、西脇知事、松井市長さんらもご出席頂き盛大な大会でした。
小生は冒頭に御礼の挨拶を申し上げ、池坊専好師の講演会そして鼎談になりました。
左から田中峰子副会長(京都登文会)、池坊専好師、畑社長

「京都の文化を愉しむ」のメインタイトル通り、畑社長も大いに楽しんでお話をされました。

池坊専好師は池坊華道の次期家元ですが、実に気さくで聡明なおかたです。

畑社長へ質問があり、「老舗の三百年の暖簾・伝統を背負うとはどういうことですか?」
畑社長は、「背負うのではなく、先祖の基盤に感謝しつつ革新を続けることが伝統を守ることになります」と言われました。

実に楽しい鼎談で、会場から会員(登文会)から次々と質問があり、盛り上がりました…
畑社長のお人柄が心にしみて観衆は大拍手でした。

畑社長、本当にありがとうございました。
320年の老舗を隆々と盛り上げ、伝統産業にあってグローバルな目線の秀逸な経営者、京都を代表する文化人、熱心な社会活動家、そして何よりも魅力的なお人柄でした。
心より感謝と敬意を捧げます。 合掌